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2015年8月

2015年8月25日 (火)

『 Blue Moon 』 オリジナルヤマト妄想話

宇宙戦艦ヤマト・ブラックタイガーチーム 加藤隊長、山本明くんの月面基地赴任直前のお話です~

 

       『 Blue Moon 』

グッと操縦桿を引く。
メインギアである後輪が接地。機体前方は軽く上向き、滑るように滑走した後、ノーズギア・前輪も地を捉える。
舞い降りるの言葉が相応しい見事なタッチダウン。
機体を誘導員の指示に従って所定のスポットに停止し、エンジンカット。

「加藤隊長。お疲れ様でした」
「おう」
誘導員の労いの言葉に軽く手を上げ応える。

「良い風だ・・・」
ステップに脚を掛けながら、その心地良さに目を細める。
ふと、気配を感じて空を見上げると、暗い夜空にそこだけ灯りが灯ったように雲の切れ間から、ぽかんとまぁるい月が顔を出していた。

「もうすぐ、あそこに行くんだなぁ」
誰に言うでなく独りごちてみる。

「いつになくセンチだなぁ」
突然掛けたれた声に振り向くと、ヘルメットを肩に担ぎ、すらりとした長身を黒いパイロットスーツに包んだ、山本の姿があった。
ついさっき迄、空で共に対戦し合ったばかり。お互いに珍しく熱の入った訓練になったのは、これから先の向かうべき、彼の地への想いの表れかとも思う。
不安がないと言えば嘘になるが、これからの責務を考えると「やるぞ!」との想いの方が遥かに強い。

お互い何とはなしに並んで草地に腰掛け、月を見上げた。いつの間にか雲は晴れ、明るい満月が辺りを煌々と照らしている。
ヤマトがイスカンダルへの航海の使命を果たし、地球が元の青さを取り戻して間もなく一年。都市の再生は目まぐるしいものがあり、そのスピードには圧倒された。その技術とパワーで月にまで基地を作っちまうんだから大したものだ、と感慨深くもあった。2つのそれぞれの基地の航空隊長として、オレたちはまもなく月に赴く。

初めての航海。
14万8千光年先のイスカンダルを目指したあの時、山本は窮死に一生を得た。

「あン時のような不様な事は二度としない!」
ワープテストの話を振られる度に、苦虫を噛み潰したような顔付になる。

でも、皆、分っているさ。
お前だから還ってこれたって。

物資だってかき集め、整備だってままならず、テスト飛行をしながら戦闘に参加していたようなもの。宇宙での戦闘だって、正直ぶっつけ本番、出たとこ勝負の危うさだった。
今振り返れば、それしかすがる術はなく、皆がただただ必死だった。地球を救う一念に、生きて使命を果たすべき、皆が真剣に己の生命を掛けていた。
そんな戦火を共にくぐり抜けてきたオレたちの絆は何よりも固い。
山本になら、背中を預けられる。安心して後ろを任すことが出来る相棒だ。

「あっち(月)に行ったら、お互い新入りを鍛えて対戦しようぜ」
「おう」
と短く応えた山本の目は、いたずらっ子のように愉しそうにニヤリと笑った。

今月2回目の満月、ブルームーンの月明かりに照らされながら未来を想った。
この平和はオレたちが守る。いつまでも続くように、と。

                            ・・・ END

2015年8月17日 (月)

『 君の名は・・・ 』 2199ヤマト

スターフリート☆ベガ 『次元航路SBY』平成26年10月19日発行に寄稿。
少しばかり加筆・修正あり。
あくまで妄想だから~~ってことで温かい目でお見過ごし下さいネ~


 

    『 君の名は… 』                
                 

「 ~♪ 」
「いがさん、ご機嫌だね」

イスカンダルへの未知の航海へと旅立ったヤマト。その艦内、航空隊控室で沢村が五十嵐に声を掛ける。
「明日の赤道祭迄に仕上げたいからね」
と答える五十嵐が夢中になっているのは、バレーボール程の大きさの青い地球の3Dパズル。細かいパーツを組み合わせて器用に仕上げていく。暇をみて少しずつ時間を掛けて組み立ててきたのが「あと少しで完成だ!」と作業ピッチも上がっていく。
戦闘がなく非番時には、トレーニングで汗をかいた後、控室に三々五々集まり思い思いに過ごして緊張を解す。一度飛び立てば緊張の連続の彼らにとって、心の緩急の切り替えは重要であり、こういうリラックス出来る時間は、とても大切なものであった。
そんな平和な時間の中、その傍らで何人かが車座になって談笑している。

「オレさぁ、この前ひとっ風呂浴びようと風呂に行ったら、中に女の子がいたんだよ」
西川の唐突な言葉に
「男湯に!?」「まさか!?」と訝しながらも皆の眼が輝く。
「オレだって目を疑ったよ。前髪長くって色っぽくてさ
・・・でもなあ 」とニヤリと笑う。
「男だったんだよ、そいつ!」
「なんだそりゃ?」「誰だ!?」「早く教えろ!」
の言葉に、もったいぶったように答える西川。
「皆もよく知ってる奴だぜ。・・・ そいつは、さ・わ・む・ら!」
「沢村っっ!?」
思いがけない名前が上がり一斉に驚きの声が上がる。
「 呼んだ??」
きょとんとした顔付きで呑気に振り向く沢村に、皆の眼が集中する。そして、マジマジと見詰めた後、大工原がポツリと呟く。

「おまえ、赤道祭で女装してみない?」

「な!?なんでオレが!?」慌てふためく沢村。
「いいじゃん。祭りの余興だ」「上官の命令が聞けないというのか!?」なんて云われても、沢村にとっては知ったことではない。
「無茶な命令には反対する権利がある!!」
あまりの話に必死に抵抗する沢村の、思わず振り上げた腕の位置が悪かった。
皆に見せようと嬉しそうに運んで来た、五十嵐の完成した地球パズルに、沢村の腕がモロに直撃!?

「☆*Ω△×!!??」

五十嵐の言葉にならない叫びが上がる。
「うあっ!!ごめんなさい!!」咄嗟に謝る沢村の声も、五十嵐の耳には空しく響くのだった・・・


航空隊控室横のシャワールームから現れたのは、黄色も鮮やかな船務科の柏木紗香。そして彼女が伴って現れたのは、 フリルとレースがふんだんにあしらわれパニエに因ってふんわりとスカートが広がった水色のドレスを纏った、栗色の柔らかい巻き毛の可憐な美少女。恥ずかしそうに俯く姿は初々しくも愛らしい。
皆が、ほーーっと感嘆の声を上げる。

「絶対に嫌だ!!オレより保安部の星名にメイド服でも着せればいいじゃん!!」
「あれは管轄外だ」と却下されながらも、必死に抵抗する沢村であったが、手塩に掛けて作り上げたパズルを一瞬で破壊された五十嵐の怒りは収まらず、ついに撃沈され、柏木の手によって可憐に変身を遂げたのだった。
極秘任務を任された柏木は、化粧映えによるその出来に「我ながら上出来♪」と満足するのだった。

「あれは誰?」

見たこともない美少女を連れて赤道祭のパーティーに現れた五十嵐は、男性クルー達の羨望の的となる。
暫くの間、得意げに沢村を連れ回していた五十嵐であったが、
「ねえ、いがさん。虚しくない?」
沢村に言われ周りを見回す。

可愛いメイドさんと仲良くやっている、托鉢僧姿の隊長。
大工原のダンナまでが、黒猫ちゃんと和気あいあいとツーショット写真を撮っているのを見て「そうだよな。可愛いけど、こいつ沢村なんだよな」って我に返る。
「わかった・・・ もう、いいや」五十嵐のため息と共に解放される沢村。
やれやれと独りになった途端、

「ね!君、写真撮らせて!」

返事をする間もなく、航海科の太田がパチリとシャッターを切る。
「あ!困ります!」
こんなあられもない姿を晒すなんてとんでもない!沢村はハスキー声を上げて大慌てで逃げて行く。
「待って!!」の太田の声を無視し、可憐な姿からは想像も出来ない足の速さで、どんどん遠ざかって行く。
「追い付かねぇ…」と残念そうに見送るしかない太田。

後日、太田は写真を手に件の美少女を探し回るが、何処に行っても誰も知らず、何か知っていそうな航空隊の連中も、写真を見るとプッと噴き出すのだが、上手くはぐらかされ、結局なんの情報も得られない。
「君はいったい誰?好みなんだけどなぁ…」ってため息をつくのだった。

事の発端、件のパズルは壊れたままでは縁起が悪いと、有志総がかりで、あっと言う間に仕上げて元通り。五十嵐の怒りもやっと静まったのだった。

そして、写真の君は太田にとって
「君の名は…?」って永遠の夢の君となるのであった。

                                                             …END

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